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「やっぱり、男子校にしとけば良かったかもな…」
桜の蕾が開きかけの春に透弥は尾道知高校に入学した。
「透弥!!」
「光香」
山田光香。透弥の幼なじみで透弥に恋心を抱く可愛い女の子。
「どうしたの?」
「いや、男子校にしとけば良かったって思っただけ」
「ふーん?」
「光香、なんかいい匂いするな」
光香に鼻を近付けて匂いを嗅ぐ透弥。
光香は顔を真っ赤にして立ったまま。
「バニラ?甘過ぎじゃね?」
ショックを受ける光香を無視して、透弥はキョロキョロし始める。
「透弥。誰探してんの?」
「いや、あ!!」
何かを見つけたのか透弥は走る。
(あれはあの時の…!!)
「あの!!」
「?」
(やっぱり!!」
思っていた言葉が口に出た透弥は口元に手を置く。
入学式ではみつけられなかった背中。それがいまここにあったと思うように満面の笑みで透弥が彼女の前に立つ。
「あの、俺のこと、覚えてますか!?」
彼女はしばらく悩み、思い出せなかったのか首を横に振る。
光香が軽く透弥の肩を叩く。
「あんな人があんたのこと知るわけないじゃん。感じ悪」
「そんなこと、言うんじゃねぇよ」
透弥の冷たい目にびっくりする光香。
それ以上、光香は何も言えずに黙りこんだ。
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