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透弥は玲音の顔が見れずに俯いてしまった。
玲音は透弥の頭に手を置く。
「え…」
「私がいたら、息抜き出来ないよね」
立ち上がる玲音の腕を掴む透弥。
玲音は目を大きく開く。透弥はもの寂しげな目をして玲音を見つめる。
「いて…ください…」
「でも…」
「俺、先輩のこと知りたいんすよっ!!」
玲音の腕を掴んでいる手に力が入る。
「……私のこと知っても意味ないよ?」
「俺は――」
「透弥ー?まだいるのぉ?」
光香が透弥の名前を口に出しながら教室に入ってきた。
パッと手を放す透弥は玲音から目を静かに逸らす。
光香は玲音を見てきょとんとする。
「じゃあ、私はこれで」
玲音が教室から出て行くのを確認してから光香は透弥に駆け寄る。
「あの人は?」
「…………」
黙り込む透弥の顔を覗き込む光香の目に写ったのは恋をした顔の透弥。
ドクンッと鈍い音がした瞬間、光香の胸を大きく揺らす。
「あ…光香」
我に帰った透弥は光香に気付く。
光香はすぐにいつもの笑顔に戻す。だけどその笑顔は完全に作り笑い。
涙が流れるのを必死で堪える光香に気付かない透弥。
(気付いてよ…透弥…)
心の中で泣きわめく光香。
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