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くるっと私に背を向けてそのまま数歩駆け出したかと思うと、またこっちを振り返ってすぐに引き返してきた。
「忘れてた! ……はい、これ!」
「……!?」
両手で包み込むように、私の右手をぎゅっと握ってくる。
まだあどけない少年というイメージなのに、その手は私より大きくて骨ばった男の子のものだった。
「……な、なに……!?」
バカみたいに声が裏返る。
だって……、手!
……手がっっ!!
一気に汗をかいた手の中に、何かの感触。
手を離すと、彼はまた、にかっと元気な笑顔を見せた。
「よろしくね。 無視されたら、俺、マジ泣きするよ?」
「えっ……!?」
「よしっ、ってわけで、じゃーね、オネーサンっ!!」
「えっ、ち、ちょっ……!」
これ、何!?
そう聞くより早く、キザ王子はまた走り出そうとして、ふと動きを止めた。
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