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多くの参加者が平穏な時間を過ごす冬木市の昼下がり。
広大な森によって外界から隔絶された城にもまた、ゆったりとした時を過ごす一組のマスターとサーヴァントが居た。
「えーと、つまり私は今聖杯戦争っていう戦いに参加していて、その間のパートナーがあなたなの?」
今回の聖杯戦争参加者の1人であり、同時に何の知識も持たずに、文字通りこの地に舞い降りた一般人でもある勇魚は姿の見えないパートナーにそう尋ねた。
「そうです。正確にはパートナーというよりは主従関係に近いものですが、貴方の覚えやすいように覚えていただいて大丈夫でしょう」
サーヴァントは相変わらず霊体化したまま答える。
この陣営は、午前中全てを使って、知識のないマスターに聖杯戦争の仕組みを伝えていたのだ。
「じゃあパートナーで覚えておこうかな。主従関係だとなんだか違和感があるから」
「わかりました。……それにしても」
聖杯戦争の話が一区切り付いたのを確認すると、姿の見えないサーヴァントは午前中からずっと抱いていた疑問を言いかけて、一度止める。
彼女が抱いた疑問を問うには、まだ二人は遠すぎた。
「……随分と明るくなりましたね。昨日はあんなにも不安そうだったのに」
結局、サーヴァントは当たり触りのない質問をするに留まる。
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