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気がついたら朝だった。
はい、しました。しましたとも。
…だれか夢だと言ってくれよ……。
「あ、翔ちゃん。おはよう。」
「……おは、よう。」
「朝なに食べようかぁ。結局宿泊になっちゃったからねぇ。追加料金いくらだろ?」
「そーだな…俺はパンがいいな。」
なんでコイツはこんなに普通なんだ。
さらになんで俺も普通の対応してるんだよ!朝飯なんて事の前に聞くことあるだろ!
「翔ちゃん、今頼んだからすぐ来るって。」
「おい。………したぞ。」
真奈美の目が開く。
「…うん。しちゃったね。結構良かったよ?」
「っ、んなこと聞いてねぇよ。」
昨日見た真奈美の顔は俺が知ってる彼女の顔じゃなかった。大人の、女の顔だった。知らない間にコイツも大人になっていた。
「なんで、こんなことしてんだ?金に困ってる訳じゃねぇだろ。そもそも医者だろう。医者がこんな不衛生なことしてていいのか?」
彼女は黙ってた。
やはり言いたくないのだろうか。
なにかあったのだろうか。
俺といなかった間に。
「振られたの。」
突然彼女の小さい声がした。
彼女の顔を見た。
それは中学の時と同じ、少女の顔だった。
「大好きだった人に本気で振られたの。だから娼婦を始めた。自分を壊してほしかったのよ。」
彼女は、やはり子供だった。
言うことは言ったとばかりに話が終わると真奈美は部屋を出ていった。
それと同時に俺宛のモーニングプレートが来た。
腹が減っていたのでそれを食べ終えてからホテルを出た。
料金は真奈美が払ったらしい。
部屋に落ちてた俺の携帯からは真奈美のアドレスが消えていた。履歴さえ残ってない。
もう会うことはないのだろうか。
彼女をあそこまで追い詰めたのは一体誰なのか。
俺には一切関係ないはずなのに、なぜか気になって仕方がなかった。
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