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「もし、世界がいくつも存在したら?」
幼い頃、なかなか寝付かない僕達四つ子に突然父様が尋ねてきた。
それに対して僕達は、シーツから顔だけを覗かせて首を傾げた。
その頃の僕達にとって、それは難しい質問だったのだ。
すると、父様は優しく微笑んで再び話し始めた。
「世界は一つではない。私達人間が忘れているだけでな。」
父様の声は低く、まだ声変わりしていない僕達にとって憧れであった。
「父様、世界はどうしていくつもあるの?」
僕は、シーツの上で優しく、一定のリズムを刻む大きな手を見て言った。
「そうだな。ずーっと昔、世界が一つだったこともあるんだ。」
父様は、ゆっくりと話し始めた。
「えぇ!そうなの!?」
驚いた声を出したのは、奥で寝ている二人。
彼らは、僕達が四つ子であることを疑いたくなるほど、僕には似ていない。
そして、面白いことに、時々同じタイミングで同じ発言をする。
「ちょっと!一緒に言わないでよ!僕が先に言おうとしたのに!」
「違うよ!僕が先だよ!」
二人は、同じ事を同時に言ってしまうのが気に入らないらしく、何時も喧嘩を始めてしまう。
父様は、そんな二人を微笑みながら注意して、続きを話し始めた。
「本当だ。その時には、言葉を話したり、二本足で歩いたりする生き物は人間だけではなかった。」
「……どういうこと?」
その頃の僕達には、まだ少し意味が分からず、首を傾げて尋ねた。
「うーん、そうだな。分かりやすく言えば、犬や猫でも言葉が話せたんだ。」
「凄いね!じゃあ、皆でお話出来たんだ!」
その頃、動物と会話するのが夢だった僕は目を輝かせた。
父様は、そんな僕に優しい笑顔を向けると、僕達四人を順に見つめた。
「ファンタジーの物語は好きか?」
「ファンタジー?」
「そう。ファンタジー。魔法使いや、変わった生き物が出てくる物語だ。」
「好きーっ!」
父様の言葉に、僕達は一斉に答えた。
父様は、そんな僕達に微笑んで頷くと、再び続けた。
「お前達の好きな物語に出てくる生き物達も、この世界にいたんだぞ。まぁ、知らない生き物も少しはいたんだがな。」
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