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公園丘は山にできたこの公園の頂上のことだ。
そこまで行く坂がそれなりに急で、あまり人が訪れない場所だ。
待たせるのも悪いし、15分前に来たんだが既に向こうは待っていた。
黒いスーツに黒い靴、オールバックの黒髪に黒のサングラス、白い手袋。
聞いていた以上に怪しすぎる格好の男。
彼は俺に気づいたのかこちらを向いた。
「傘乃敏君だね」
運転用か何かのサングラスの奥には、隈のある両目が見えた。
「はい、あなたは?」
名前を聞くと男は少し考え、
「そうだね……、佐藤準(さとうひとし)でどうだろう?」
いや、どうでしょうと聞かれても。
俺の戸惑いをどうとらえたのか、自称佐藤さんは、白手袋をした右手を顎に添えて言う。
「気に入らないかい?では、テオフラストゥス・ボムバラストゥスヴァ
「佐藤準でお願いします」
あまりにもあんまりなのでつい口を挟んでしまった。
「そうかい?じゃあ、そういうことで」
佐藤さんは、話を遮られたのは気にもせず、話を続ける。
「で、話っていうのは?」
「ああ、君に少し頼みがあるんだよ。」
「頼み、ですか?」
こんな女顔というのを除けば、一般ピーポーな俺に頼みごと?
「うん。」
「どんな?」
「女装をして欲しいんだ」
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