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「どういたしまして」
胸は苦しくて、切ないほど痛くて、時々泣きそうになる。
だけど、俺は、要に笑っていてほしいから、そんな自分を必死で抑えつけている。
抑えつけて、明るく振る舞ってるんだ。
どんなに悲しくてもこれだけ笑顔で対応出来る自分は結構演技派だと思う。
いつものようにニコニコしながらゲームを返すと、要も微笑み返してくれた。
「やったやった~。煌輝に自慢しよーっと」
要の何気ない一言は時として凶器になる。
やっぱり俺は、要の一番には、なれないのかな……。
恋愛対象じゃなくてもいいから、要の中の優先順位が七瀬より俺が上であって欲しい。
要の口から“煌輝”という名前が出るたび、幼なじみという高い壁を感じながらもそんなことを思ってしまうのだ。
「七瀬もそのゲームやってるんだ?」
「そ!どっちが先に全クリ出来るか勝負中!負けたほうがケーキをおごることになってんの」
「相変わらず仲良いね~」
「え!?いや~……意外とケンカばっかしてるよ?まあ、なんていうか、もう身内みたいな感じ……かな。あはは……」
身内、ね……。
あー……自分から話振っといてヘコんでるし……なにがしたいんだ俺。
「幼なじみはいいね……」
本当、七瀬がうらやましい。
小さい頃からこんな超絶可愛い要と一緒に過ごしてきたなんて。
でも、七瀬はいつから要を好きになったんだろう。
少なくとも、俺と出会った頃はすでに『要が好きオーラ』出てたし……そうなると高校入学前からってことになるよね?
中学生のときから?いや小学生?まさか幼稚園……?
いずれにせよ、俺よりもずっと長い間片想いしてるのだとしたら……それはそれでキツいだろうな。
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