俺の好きな人

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「いってきまーす」 「あ、爽ちゃん待って!あたしも一緒に行く」 支度を全て終え、玄関で靴を履き終えると奈々がカバンを持って小走りにやってきた。 「いつもより家出るの早いね?」 腕時計で時間を確認したあと、奈々の顔を見る。 俺は学校まで電車だから7時には家を出なくちゃいけないんだけど、奈々の中学は歩いて10分。 いつも俺よりずっとあとに家を出るんだけど……。 「朝練あるから」 不思議そうな顔をしている俺に向かって、奈々はテニスのラケットを見せた。 「あぁ……」 そういうことね。 納得した俺は玄関のドアを開けて先に外に出る。 「そうだ。爽ちゃん、今度テニス教えてよ」 「え~、なんでそうなる」 「なんでって、元部長じゃんか」 「何年前の話だよ。もう勘がニブってるから無理です~」 ふわあ、とやる気のないあくびをして見せると奈々は「ケチ!」と言ってぶすくれていた。 一緒に並んで駅の方に向かって歩いていると、奈々が突然、駅の近くのコンビニの前で足を止めた。 「……どうした?」 「え?ああ……王子いないかな~と思って」 「王子……?」 そのフレーズに思わず、眉をひそめる。
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