俺の好きな人

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「……え、王子ってまさか七瀬なんて名前じゃないよね」 眉間にシワを寄せ俺もコンビニに目を向ける。 「誰ソレ」 心配する俺をよそに奈々が冷たく言い放った。どうやら違うらしい……良かった。 自分の身内までもが七瀬にキャーキャー言ってたらマジでヘコむわ……。 「あ、いや、こっちの話。違うならいいんだけど……で、誰?王子って」 「ああ、最近ここのコンビニに新しいバイトの人が入ったんだけどそれが超イケメンなんだよ!」 「へぇー」 「土日の朝はシフトが入ってるみたいでこの時間にいたりするんだけど……平日はやっぱりいないかー」 「そんなとこまで知ってるんだ……」 怖。自分の妹ながら、ストーカー気味なところに思わずちょっと引く。 「夜は7時くらいから入ってるみたいなんだけど」 「……あ、分かったかも」 俺の頭の上でピコーンと電球が光った。 俺はよく帰り道にこのコンビニを使うのだけれど、たしかに最近新しい店員がよくレジ打ちしているのを見掛ける。 店員の顔なんていちいち気にしてないし、何より俺のタイプじゃないから特に気にもしていなかったけど、言われてみればその店員はイケメンだったような気がする。 あの時間にいる店員でイケメンと言えばせいぜいその人くらいだから、奈々はきっとその人のことを言ってるんだろう。 俺の頭の中にぼんやりとレジを打つ例の店員の姿が浮かんだ。 「あれだよね、大学生くらいの人でしょ?」 俺の1、2歳上って感じの見た目だった気がする。 「そうそう!その人!」 やっぱりか。 「今日部活の帰りに寄ってみようかなー」 「コンビニ行くのは構わないけどストーカーにだけはなるなよ……」 それだけは念を押して、俺たちはまた駅に向かって歩き出した。
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