三味線

8/21
前へ
/23ページ
次へ
体育館の扉を開ければ、外に爆音が流れ出る。 夕日に照らされる4人がいた。 暁良の存在に気づいた彼らは、演奏を中止した。 「少し遅かったな。進藤。何かあったか?」 初めに話しかけてきた背の高い男子は、『御厨 浩次(ミクリヤ コウジ)』。 今のところギター担当である。 今のところ、というのは、どうやら御厨はほどんどの楽器を使いこなせるらしく、今は暁良のコーチのためにギターを持っている。 どこに配置されても良かったらしいが、暁良という重荷を解消するにはベストな役だった。 だが、このバンドを建ち上げたのは他でもない御厨である。 つまりは、暁良のコーチ役に、自ら買って出たということだ。 理由は明確で、『親友』だからだ。 古くからの友である御厨には、言葉のいらない仲であった。遠慮がちな暁良も、御厨に喜んでレッスンをつけてもらったのだ。 「じゃあ、進藤を組み入れて立ち位置を直すぞ」 御厨がそう呼び掛けて、暁良は彼の右後ろに着く。 すぐさまギターケースから取りだし、演奏の準備を進めた。 後ろには電子ピアノとドラムがつき、先頭に御厨。左にベースといった形にある。 「どうだ暁良。浩次の教えは身に付いてるか?」 左のベース担当から話しかけられた。 『岬野 仁(ミサキノ ジン)』。あまり、話したことはない。 ただ、風貌と口調がかなりきつい。 いかにも不良柄というか、ヤンキーのようだ。言い方は悪いが、遠回しに言うよりかは数倍伝わりやすい。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加