三味線

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激しいビートが轟いた。 皆、自分の楽器と共振しているみたいだ。 暁良は必死にテンポを思い起こし、指へと伝えた。次々と弾かれる弦と弦。 めまぐるしさに、呑まれてしまいそうになる。 だが、次々と流れ来るテンポに、必死にしがみついた。 思わず肩が上下し、目をつむってしまう。先頭からの御厨のギター音。 それを楽譜代わりにし、ワンテンポ遅れてでも付いていった。 差し込む夕日。 なんだか、音が遠ざかるような気がした。 今、自分はすごく幸せだ。 だけど、こんな幸せなんて本当につかの間で、少しも経たないうちに去っていくものだ。 そう思うと、切なくて、儚くて、寂しくて。 でも、そういった事に『青春』を感じずにはいられなかった。 最近はつい、こんなことが頭によぎる。 特にギターの演奏中がもっぱらである。 それはいつか訪れる終わりに恐怖しているのか、疲れがたまっているからか、よくわからなかった。 幸せな時ほど、終わりを恐れる。 誰かの言葉だったが、とうの本人は思い出せなかった。
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