9人が本棚に入れています
本棚に追加
プチンッ!
高く弾けるような音が、暁良を引き戻した。
見ると、二弦が切れていた。
止まる演奏。
「進藤。弦が切れたのか」
4人の注目を浴びる。少し、やってしまった感はあるが、過ぎたことは仕方がない。
夢中だったのだ。ちょっとばかし、力を強く入れてしまっただけだ。
「とりあえず、今日中にショップで張り替えてもらった方がいいな」
そう言い、御厨は暁良からギターを取り上げて、ちぎれた弦をほどいた。
そのくらい、一人でできるぞ。
やっぱりまだ、僕を素人としか見てないのか。まあ、弦を切らす奴なんてまだまだ素人かな。うん。
「今日は早いが、これで解散にしよう。みんなでやってこその練習だしな」
なんか、それっぽい事を言ってら。
とりあえず、ケースにしまい、帰る支度をした。
その時、後ろから手を引かれる。
「少し来てほしいんだ」
『櫑蝶 阿良治(ライチョウ アラジ)』。長髪、眼鏡、すらっと伸びた身長。
第一印象は『不気味』。
今まで、まともな会話をしたことは皆無だ。というより、暁良が少し避けていた人物だ。一目見た瞬間に関わらない方がいいと思ったからだ。
それは少しひどい話だが、風貌を見れば遠ざけてしまうのも致し方ない。
そのくらい、パンチの強いビジュアルである。
「ええと...。今からは、ちょっと...」
「荻原欹織についてなんだけど」
欹織?
阿良治が欹織の何を知っていると?
最初のコメントを投稿しよう!