三味線

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プチンッ! 高く弾けるような音が、暁良を引き戻した。 見ると、二弦が切れていた。 止まる演奏。 「進藤。弦が切れたのか」 4人の注目を浴びる。少し、やってしまった感はあるが、過ぎたことは仕方がない。 夢中だったのだ。ちょっとばかし、力を強く入れてしまっただけだ。 「とりあえず、今日中にショップで張り替えてもらった方がいいな」 そう言い、御厨は暁良からギターを取り上げて、ちぎれた弦をほどいた。 そのくらい、一人でできるぞ。 やっぱりまだ、僕を素人としか見てないのか。まあ、弦を切らす奴なんてまだまだ素人かな。うん。 「今日は早いが、これで解散にしよう。みんなでやってこその練習だしな」 なんか、それっぽい事を言ってら。 とりあえず、ケースにしまい、帰る支度をした。 その時、後ろから手を引かれる。 「少し来てほしいんだ」 『櫑蝶 阿良治(ライチョウ アラジ)』。長髪、眼鏡、すらっと伸びた身長。 第一印象は『不気味』。 今まで、まともな会話をしたことは皆無だ。というより、暁良が少し避けていた人物だ。一目見た瞬間に関わらない方がいいと思ったからだ。 それは少しひどい話だが、風貌を見れば遠ざけてしまうのも致し方ない。 そのくらい、パンチの強いビジュアルである。 「ええと...。今からは、ちょっと...」 「荻原欹織についてなんだけど」 欹織? 阿良治が欹織の何を知っていると?
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