三味線

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気づけば阿良治とショップの前。 交差点、横断歩道の先にあるショップの前に立ち、ガラス越しに店内を見回していた。 そんな阿良治を不穏に思う暁良だったが、目当てのものが見つかるまで後ろで待機した。 「欹織はいつもこの時間帯に、ここに来ている...」 店内に視線を移したまま、阿良治は言った。 なんで、そんなことを知ってるんだ?僕ですら知らない。 ますます怪しげに思った。 こいつは危ない。直感が告げる。 でも欹織と聞いて見過ごすわけにはいかないのだ。日々、弱味を握るため、情報収集を欠いた日は一度として無かった。 はたから見れば変態だ。 だが、暁良には性別なんて境は、欹織には存在しない。ただただ敵視し、相対するものでしかなかった。 偶然、敵が『女』という種別なだけで、そこに何の感情も抱いていないのだ。 向こうも妨害を重ねて来るのだから、仕方ない。
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