三味線

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こちらを向く。 「ああ。言うならば、好きだからかな」 へ? 今、何と? 今、『好き』って言った? いつのまにか疑問をぶつけていたらしく、阿良治は「そうだ」と返してきた。 まさか阿良治が思いをよせているなど、考えもしなかった。 人が人を好くのは自由だ。 だが、暁良はそんな道徳も気にもせず、ただただ驚いた。何気なく言う様にも驚いた。 「なんだよ、その顔は?まるで、俺が恋心を抱いているのが信じられないって感じだぞ」 核心を貫かれた。 だってそうじゃないか。 ロン毛にだらしない格好、はみ出るシャツ、線のような目、あげればきりが無い。 本当に自分の心の腹黒さを呪うが、拭いきれないイメージが思考をジャックしてくる。 そして思わず、 「欹織はやめとけ」 ぽんと肩に手をおき、発していた。
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