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「.........」
案の定、黙りこむ欹織。
やはり相当、暁良に知られたくない事柄だったようだ。
しかし、あまりにも苦な表情を浮かべる姿を見て、そこまでして問う必要もないだろうと思えてきた。
なぜなら、すでに弱味は握ってしまっている。
これからは自分を模範と見なすことは到底できないだろう。それだけで豊作だ。
なんとも言えない気持ちだ。
まるで最強の『矛』と『盾』を手に持っているようである。
妨害も暴言もすべてが封じられた欹織は、さぞかしおとなしいことだろう。
元々はおしとやかな性格なのだ。
欹織は今だ目を合わせない。
すると、いきなり顔をこちらに向けた。
「...。今まで、黙っててごめんなさい...」
ころりと態度を変えた欹織に、暁良は戸惑った。
いきなり、どうしたんだ?
なにか大きく、欹織の不穏分子のようなものを感じた。
「そろそろ隠し通すには限界だと思ってたの。わたしの行動には訳があって、そしてその訳というのが何なのか。だから今から話すことは、しっかり聞いて」
そう言い、二人の手を引き連れ、店内へと入った。
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