三味線

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やっとこさ戻ったのは、始業30秒前くらいだった。 「滑り込みセーフ。って、進藤、しょぼくれた顔してっぞぉ?また荻原に説教されたか」 席に座ると同時に、隣が話しかけてきた。 「航流(ワタル)、その通りだよ...」 けらけらと笑う航流。 「ああも人生観念ぶつけられちゃあ、たまったもんじゃないな。進藤も」 航流は気楽そうに、腕を頭にまわした。 「また、他人事みたいに...」 「だって他人事じゃん」 それもそうか。 他にとっては他人事に変わりない。 「なあ、それよりもさ。お前らバンドやってんだろ?バンド」 「うん。そうだけど」 なんだか目の輝きが変わった。 「かぁっけーよなぁ!」 教室中に響く音量で言った。 「い、いきなりどうしたんだよ?」 窓際の数名がこちらをちらと見た。 「いや、だってさ。ギターとか掻き鳴らしてる姿、テレビで見てたらすげーかっけーじゃん」 いつの間にか、目の前に顔が迫っていた。 「俺もなりてぇよ、そんなの!」 そんな言葉に、呆れた風に言い返した。
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