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部活生で賑わい始める放課後。
暁良はすぐさま体育館へ向かっていた。
倉庫裏に隠しておいたギターも見つからず、とりあえずひと安心する暁良であった。
自分でも隠せないほどの高揚感を抱き、足取りを進める。
昨日のように日は赤く、燃えるような太陽が山に隠れようとしていた。
突然、横から目の前に誰かが立ち塞がる。
その人物は欹織だった。
なぜかいかがわしげな目で、こちらを睨み付ける。
「その背中のケース。何なの?」
とげのある口調で言った。
暁良はすこし、口ごもったが、なんとか返答した。
「...っと、友達から借りたギターだよ」
通じるか通じまいか、賭けに出る暁良。
「そう。昔から嘘が下手なのは相変わらずで」
だが、その願いもむなしく、見透かされてしまっていた。欹織に嘘が通じたことはなかったが、今回はばれるわけにはいかなかった。
なぜなら、このギターを見れば『文化祭のための練習』をしていると、悟られてしまう。
それは困るのだ。
なぜなら、欹織はいつも、『道楽』と見なす行為は、すべて邪魔をしてくる。
自らの母親を尊敬する欹織は、母の意思も同調する。つまりは『暁良には道を踏み外さないでほしい』と願う母に同調して、欹織は暁良のすべてをふるいにかけているのである。
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