ミカゲの場合

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「さて、行くか」 扉が完全に開き、中の様子が明らかになる 随分前に作られたのかボロボロになっている本や装飾のないひび割れた仮面、部屋の壁をそれらが飾る中に大きく簡素な机 「部屋の中の何か」がまがまがしさを放っているのではない 「この部屋の全て」だ 躊躇うこともなく足を踏み入れ、結もうろたえながらそれについていく ミカゲは石版を中央の机に置く 「解読開始だ」 彼の体から無数の腕が現れ文字通り本棚に手を伸ばす 解読に必要な本を選び出すと違う腕がページを捲りだす 背中(であっただろう部分)から本と同じ数の目蓋が開く 体の組織、姿を自在に変えられる ミカゲの異形たる由縁だ その性質のためか本当の姿というのを誰も知らない 本人すらも、だ
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