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手に何個か提げた小さなデザート用の袋が微かに震えている…
無意識に慌てて寮部屋から出たため、制服は少し乱れていて……
ドア外へと出るとなんとなく後ろドア、背にもたれかかる…。
カサカサッ…
震え続けるデザート袋…。
落ち着こうと大きく息を吸い込むとそっとさきほどまで握られていた腕へと視線を落とした…。
「痣…………できてる…………」
瞳に映り込んだのはくっきり赤く痛々しい痣となり残ったサトルさんの手跡…。
いきなり手を握られた瞬間、
あんなに柔らかで温かかった悟さんの瞳が一瞬で深い深い底しれぬ海のような色に染まり冷酷な瞳へと変わった…。
すごく怖かった…
さっきまであんなに優しげだったのに…
人間とは思えないほどの鋭い瞳に僕はいいようのない恐怖に震えてしまっていたんだ……
一時動けずに立ち尽くしていると…
ゴーンっ…
夜中の12時を知らす学園のベル音が静寂保つ廊下に響きわたる……。
「!」
いそがなきゃ……
さきほどの冷酷な悟さんの瞳に呪縛されてるような感覚を無理に振り払う…。
悟さんにかぎって冷酷だなんてそんなわけないですよね…
凄まじい力も……
痛々しい痣跡を無理に片方の手の平で隠すと強く瞳を閉じる…。
「ただ勢いが強かっただけですよね…。」
無理に疑いを封印すると振り切るように僕はがむしゃらに走っていた
『ありがとう…』
抱きしめられた温かさと柔らかな悟さんの笑みだけを信じて思い浮かべて。
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