蛟の波瞳(ナミダ)

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突然ピタリと止む風の豪音…。 紫戯は空をゆっくり見上げる…。 【【【紫戯様…!!!!】】】 次々に駆け寄ってくる雷狼の部下達は懸命に紫戯の胸に突き刺さる弦を抜こうと必死にしている…。 紫「もう……やめろ…。俺に構うな………」 ぽつりこぼれ落ちる紫戯の言葉に群れは一斉に紫戯へと視線を写した…。 紫「最期の命令だ……。お前達……………俺をおいて逃げろ………。」 雷狼達【………!!!】 紫「………今回の嵐は今までよりはるかに大きく破壊的だ…。お前達もわかっているはず本能が本当の恐怖が起きると教えている事を…。おそらく…俺はこのまま動けず波に呑まれていくだろう……」 雷狼達【紫戯様…!!!!】 紫「かまわねーよ……どうせ…もう…ハァ…ハァ…目の前に最期が見えてんだよ…………。銀…立てるか?」 銀【は…い。どうにか………大丈夫です…。】 紫「ごめんな………銀…。その痛みに耐えてくれると思っていた…お前は強い…。この嵐から逃げきれ銀…。そしてトップになってくれ…!!……俺みたいな仲間なんてものこけにするようなトップになどけしてなるんじゃねーからな……」 銀【紫…戯様…!!!!……はっ…あれは…!!!!?】 紫「…………来たな………蒼魔……………」 ピリピリと張り詰めていた空気を切り裂くように再び轟音が鳴り響くと同時、紫戯達の目の前に迫りくるとてつもなく大きな波…。 そのてっぺんに膝をつき蛟一族トップ…蒼魔が陸を鋭い瞳で見下ろしている…。 紫「銀………早く…………逃げろ……できるだけ速く…そして遠くに………」 銀、雷狼達【………………】 あまりの大きな波に動く事を忘れた銀を初めとする雷狼一族の群れ…。 その数千の瞳に美しく大きな波は映り込む…。 紫「……てめーら…!!!!早くいけーーーー…!!!!!!」 ビリビリビリ… 紫戯の大きな怒鳴り声とともに群れ一族に紫戯による強烈な電気が走る…。 それにより我にかえる銀の瞳から涙がこぼれ落ちた 銀【皆……我についてこい…!!!!!】 最後の銀の声をききとげるとともに紫戯はまっすぐに蒼魔を見上げた
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