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久し振りに一緒に飲まないか、と貴人から連絡が来た。
時期を鑑みるに、花見ということなのだろう。
言われてみれば暫く――大裳が六合の教育係となってからは、色々忙しくなったこともあって、ゆっくり話をする機会もとれなくなっていた。
加えて貴人の方は元々誰より忙しい人であるから、大した理由もないのに連絡することなども出来ず。
……恐らく貴人としては、そういった事情を踏まえた上で、美味しいお酒をお供に美しい桜を見て、それから大裳や六合の近況などを聞けたらと思ったのだろう。
十二天将を始めとした他人のことに、いつも気を廻している貴人らしい気遣いだ。
彼のことだから、大裳の好きな銘酒ぐらい用意してくれているのだろう。
いつでも穏やかな表情を崩さない貴人のことを思い浮かべて、大裳はくすりと笑った。
指定の時間、既に陽が落ちた夜闇の中、美しい銀月が空に佇み見下ろしている。
花見だろうに何故に夜かと一瞬訝ったが、つまりは夜桜を見ようということかと直ぐに気付いた。飲むのであればその方が都合がいいのも事実。
貴人から言われた場所に赴けば、既に其処には貴人と――青龍が居た。
なんとなく、成程、と思う。
今日くらいはゆっくりと、肩の力を抜いて。のんびりしていけと。これもまた貴人の気遣いなのだろう。
近付く大裳に気付いた貴人が、軽く手を挙げる。
それに応じて自分も手を挙げて返すと、柔らかな笑みが返って来る。……正直、恋愛対象として貴人のことを見たことはないしこれからもその予定はないが、この男に憧れる気持ちも恋い慕う気持ちも、解らなくはない。
容姿も整っていると思うが、それより何よりこの男の醸す雰囲気は、相手を落ち着かせる。と同時に、居心地の良さを与えてくれる。
単純な言葉で評するなら、綺麗なのだ。存在そのものが、とても。
一応自分達にも存在する、年齢、というもので言うなら貴人は実は自分よりも下なのだが、それでもこの万事に鷹揚とした空気は、他の誰に出せるものでもない。敢えて近い者を探すならそれこそ青龍ぐらいだろう。
だが、悠久の時を経た青龍と似た雰囲気を出せるというのは、やはり貴人ぐらいだ。
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