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「最近の様子はどうかな」
「……六合は真っ直ぐだね」
「其処は天后もだね」
これで伝わるだろうと告げた言葉は、きちんと伝わったらしい。
貴人は同じように返してきたが、そんな彼は天后の教育係でもある。確か青龍も一緒に天后に勉強などを教えていると聞いたが、その青龍からはコメントはない。
普段ならよく話すのに、じんわり味わう程に気に入る酒だったのか、それとも目の前の桜花に感じ入っているのか。珍しく無言で飲み続けている青龍にやれやれと少しだけ内心に思ったのは、天后の、恐らく憧憬の念が今は一番大きいのだろう青龍への複雑な感情が、さっぱり伝わってなさそうだと思ったからだ。
だが、――
「六合と天后と言えば……あの子たちはいつまでも慣れてくれなくて」
「慣れ?」
不思議そうに何度か瞬いて、だが大裳の言いたいことが解ったのだろう。貴人は思わずと言った具合に一度吹き出し、それからふるふると肩を震わせた。
「……まあ、うん、もう少し時間は掛かるんじゃないかな……」
くつくつと微笑う貴人を横目に肩を竦めると、青龍は興味なさげにやはり無言で飲んでいる。
……やっぱり青龍には伝わってなさそうだと、この先の天后を思い小さな溜息。と共に。
未だ微笑い続けている貴人をそっと見遣る。
貴人は少し、青龍とはわけが違う。
多分貴人は、色々と理解している。
例えば、アマテラスの淡い想いの存在も、薄っすらと気付いているのだろう。
それでも、貴人はそれに応えない――応えられないのだ。多分。
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