散々な日

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散々な日

起きて!遅刻するよ!! 彼女の声が聞こえる。 (あぁ、寝過ぎてしまった。あのまま起きていれば・・・) 今更ながら僕、加南誠(カナムマコト)は後悔をする。 「ほら、ちゃんとして!起きなさい!」 先程は遠くから聞こえた彼女、堀谷美嘉の声は、今度は近くで聞こえている。 「全くもう・・・」 そして呆れられた様な声だ。 次の瞬間、僕の唇に彼女の唇が重なる。 永いようで短いこの時間。 「これで少しは目が覚めましたか?王子様!」 最後は頬を軽くビンタされた。 途中から狸寝入りだったのもばれていたようだ。 「あぁ、起きたよ」 身体を起こし、寝癖でボサボサの髪をくしゃくしゃ、と掻く。 「今日は学校でしょ!さっさと仕度仕度!」 ハキハキとした彼女の声を聞くと目が覚めてくる。 (もちろん、キスの効果も絶大だけれど。) 一人で含み笑いをしてしまった。 ベッドから立ち上がり、鏡を見る。 予想以上に寝癖がついていた。 「こりゃ酷いな。」 思わず苦笑いをする他ない。 少し茶色がかったその髪を撫で付けようとしたが、無駄だったのでシャワーを浴びることにする。 どうせ遅刻は日常茶飯事だ。 部屋を出て廊下を進む。 途中、美嘉のいるキッチンが見える所をあえて通る。 「おはよ、まーくん。」 あ、綺麗だ。 なんて見惚れてしまう程美しい女性。 こんな人が僕を選んでくれているのが夢のようだ。 「おはよう。シャワーを浴びてくるよ。」 僕がそう言うと、彼女は苦笑いして 「そうね、その方がいいわ。」 と返事を返し、また朝ご飯を作ることに専念する。 こんな平和な日常。 誠は顔がニヤつくのを分かっていても抑えられなかった。 大好きだよ。 彼女には聞こえないように、そう小さく呟いた。
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