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祖母が病気でこの世を去ったのは、草木が青く輝く5月だった。
告別式を終えて放心状態のまま、ただただぼんやりと祖母が作り上げた庭を眺めていた。
初夏の草花の勢いは生命力を感じさせ、それは命がつきてゆく様を見ていた私達には辛いものだったけれど、このままでは大切な庭が荒れ果ててしまうと、手入れと片付けを始めた。
庭のあちこちに使い古されたスコップや鍬、扱いやすいように形を替えられた針金ハンガーといった祖母を思い出させる物が散らばっていて、それらはひっきりなしに大切な人の不在を私達に突きつけていた。
逃げるように視線を上げては、この庭はこのままで守っていこうねと言い合い、でもこの庭に祖母が居ない不在を信じたくなくて黙りこむ…
そんな日々の繰り返しだった。
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