07 悩みごと、深まる。

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再び落ち込む孝太郎さん。 「……」 最低だ。最低だ。最低だ。 最悪だ。最悪だ。最悪だ。 自己嫌悪のトルネードが巻き起こっています。 「失礼します」 沈み狂う孝太郎さんの元に、再び1人の男子生徒がやってきました。 「ああ、広瀬か」 気を取り直して、今度こそ仕事をしよう。 俺は先生、俺は先生、俺は先生…… 「どうした?」 教室に入ってきたものの、黙りを決め込む広瀬幸也。 それから、どこか挑むような空気。 「悔しいです。物凄く悔しいんですよ」 「何がだ?」 「出遅れた事が」 言葉の意味が掴めず、困惑する孝太郎さんに対し、広瀬君は構わず続けます。 「でも、いつものスタンスを崩すつもりはありません」 挑戦的な顔つき。 その中に幼さは感じられない。 広瀬幸也と黒田誠に出会ったのは高等部の時。 孝太郎は、当時の部活の顧問に頼まれ、小等部の剣道クラブに所属していた彼らを指導していた事を思い出す。 10歳だった2人。 その時から大柄だった黒田誠と比べ、広瀬幸也は小柄で、華奢で、非力な少年だった。 しかし、負けん気だけは誰にも負けない。 芯の強さだけが、彼の唯一の武器。 今は、それに実力が伴ってきた。 小学生時代の広瀬幸也とは、全くの別人。 「僕は負けるつもりは、これっぽっちもないですから」 嬉しさが込み上げてくる。 例え…… 「相手が貴方でも」 彼が自分に宣戦布告をしたとしても。
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