桜の木の愛

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「僕は…大切な人を戦争で亡くしました。それは今年の春の事です」 「戦争とは、どうして関係のない人を巻き込むのでしょう?僕には到底、理解できません」 「それなのに、両親は日本男子であるなら、戦争で死ねと言うです。政府は関係のない国民までもそんな考えを植え付けて、何がしたいというのですか?」 「僕はどうして、大切な人を守れないのですか?」 「僕には徴兵令は政府から言われていません。僕の体が弱いせいですか?あの場所に居たら、友を救う事が出来たのかも知れません。そして、僕の体が強ければ、妹を救う事が出来たのかも知れません」 「僕は無力です。僕は生きる価値すらない人間です。僕は愚かな人間です。神は僕に弱い体を授けて、僕に何をさせたいというのですか!?…ゲホッ」 朔夜は苦しそうに咳をすると、私の目の前に蹲りました。 それでも、朔夜は続けます。 私はそんな朔夜をもう見たくはありませんでした。 でも、私にはそれをどうする事も出来ませんでした。 「もう…嫌です………ゲホッゲホッ…僕は…ゲホッ…強くなりたい……」 「病気にも…負けないくらい…強く…ゲホッ」 朔夜はそれっきり何も言わなくなりました。 朔夜の思いは痛いほど解りました。 私はどうしても、朔夜の近くに居たくなりました。 私はどうしても、朔夜に話し掛けたくなりました。 私はどうしても、人間になりたくなってしまいました。
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