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私は桜の木。
春には桃色の花をつけて、人々を喜ばせる。
夏には花は散ってしまって、緑の葉をつけて、人々を落ち着かせる。
秋には緑の葉さえ散ってしまって、人々を冬へと誘う。
冬には寒さに耐えて、春への準備をして、人々の心をまた春へと戻す。
それが私、桜の木。
人の来ない丘の上に年中、佇んでいます。
そんな私を毎年、見に来てくれる人間がいます。
それは朔夜(サクヤ)という青年です。
彼は毎年、私が花を咲かすと満面の笑みでここまでやってきます。
そして、言うのです。
「美しいね」って。
その言葉は魔法のようで、とても私の中に温かいものを生むのです。
それは人間達の言う嬉しいという気持ちなのです。
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