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それはある年の春の事です。
この年も私は朔夜を待ちました。
でも、今年の春は来てくれませんでした。
それはそれは報われない気持ちを抱きました。
人間達の言う悲しい気持ちになりました。
そして、心配という気持ちにもなりました。
朔夜はどうしたんだろう?
大丈夫なのだろうか?
春を過ぎ、夏にはそんな事ばかり考えるようになりました。
そして、動けない自分を情けに思い、憎むようにもなりました。
こんな時、動ける動物達を羨むようにもなりました。
そうやって、夏は過ぎていきました。
そして、枯葉が舞う秋の季節。
私は朔夜を心配しながら、迎えました。
去年までのような、春が早く来てくれないかと思いながら秋を迎える事は出来ませんでした。
そんな秋が中旬に入った頃、変化が起きました。
朔夜が来てくれました。
とても悲しい気持ちになりました。
朔夜の顔に前の笑顔が無くなっていたのです。
そんな朔夜が口を開いて言ったのです。
「僕は大切な人をなくしました」
そう小さく私に囁いたのです。
それはあたかも私が朔夜の話相手のように私に言ってくれたのです。
私の気持ちは伝わらないけど、私は朔夜の話を聞こうと思いました。
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