境界線

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「全然イヤじゃない」 私が答えると、シローちゃんは 「ん」 って1回だけ満足そうに頷いて、 「嫌じゃないなら付き合って」 川の方に向いてた体を私に向けた。 「へ?」 裏返った声は私の声。 頭が真っ白。 なになになになに これマジどうしよう。 焦って、何か言わなくちゃって焦って、声の出し方が分からなくて焦った。 「付き合うの?」 焦って何を言おうかとか考えもせずに訊き返してしまう。 「未咲が俺を嫌じゃないなら付き合って」 なんか変に丁寧にシローちゃんが言い直した。 「なんで?」 「お前、梵が好き?」 「うん」 「俺は?」 「好き」 「ん」 シローちゃんの質問に答えると、またちょっと満足そうに頷く。 「いやいやでもでも、私、付き合うって分かんないし」 「それは知ってけばいい」 「彼氏とかいたことないし」 「知ってる」 「ですよねー」 焦ったりアタフタしてるの私だけで、シローちゃんはもうホントいつも通り。 しっかり落ち着いててさー少しぐらい私みたいにアタフタしたらいいのに。 「今と変わらないから」 安心させるみたいに言われてもどうしていいのか分かんなくて、心の中で小人バージョンの私がものすごく走り回ってる。
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