境界線

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「お前は俺じゃなきゃ無理」 「言い切らないでよ」 はっきりキッパリ言ったシローちゃんに文句を言ってみる。 「分かんないからってビビッて抵抗するのは諦めろ」 「意味わかんない」 「お前はたぶん分かってる。あとあと説明してやる」 「そんなことない。わかんないもん」 「もうお前は諦めろ。俺は絶対に諦めない」 絶対に、に力を入れて言ったシローちゃんが私に手を伸ばす。 それが見えて体にギュッと力が入った。 何をされるか分かんなくて怖かったから。 でも、その手は私の髪にそっと触った。 耳の横をなでるように。 「未咲」 名前を呼ばれて目を開ける。 髪を撫でられていつの間にか目を閉じてたみたい。 目を開けたら、正面にシローちゃんが見える。 本当に突然。 いきなり何かが分かった気がした。 何が分かったのか全然分かんないけど、何かが分かった気がした。 「うん」 気がした瞬間に、私の口からポロリと言葉が出る。 私が動いて動かした。 立ち尽くしていた境界線の前から踏み出し踏み越え 境界線のその境目を
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