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僕と彼はそれ以来、朝早く学校に来ている。
他愛のないことを話していたり、時には真剣に将来の事を語り合ったりすることもあった。
卒業してからも互いに連絡を取り合い、付き合っていけると確信していた。あの時までは──
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「モブキャラはモブキャラらしくすればいいのに。
主演の役者にでもなったつもり? 気持ち悪いから消えてくれない?」
六夜の幼なじみから呼び出しを受け、そう言われ、
僕は漠然と抱いていた感覚を的確に突き付けられ、膝から崩れ落ちた。
この世界は、二人の物語の舞台。
僕はただの『モブ』『エキストラ』『その他大勢』で居ても居なくても一緒。
やること為すことの全てが無駄で、生きている意味も価値もない。
死ぬことも紙面に載せられるかどうか分からない。
載っても『Aさん』のように、僕を僕として扱われることもないだろう。
春の桜が散り去って風に舞う季節、僕は卒業と共に町から消え去った。
六夜とその幼なじみ君は知らない土地へ、父親の単身赴任先に逃げるように移り住んだ。
今は、葉桜になった並木道を歩いて高校の校門を潜り抜ける。
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