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あぁ…私ったら…
軽い目眩を覚えながら、ナイフとフォークを置いて横に立つ彼を見上げた。
「あの…沖田さん?」
「はい?何かお気に召しませんでしたか?」
彼の視線が自分の仕事を確かめるようにテーブルの上をさ迷う。
「あ…いえ。そうじゃなくて…お話があります。沖田さんも座ってもらえますか?」
右手でテーブルの向かいの席に促すと、彼は一瞬躊躇いながらも静かに席に着いた。
「失礼します…お話とは?」
姿勢良く席に着いて真っ直ぐに見つめられると、なんだか話を切り出しにくくなってしまうのは何故だろう…
良く見ると愛らしい優しい顔をしている。
子犬?…そうだ、子犬に似ている様に感じる。
「…花音様?」
「あっ…ごめんなさい」
つい彼に見惚れてしまって、冷や汗が出てきそうだ。
「…実は…私には執事はいらないんです」
少しだけ後ろめたい気持ちみたいなものがあって、自分で言った言葉に対する反応を見れないでいる。
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