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「……花音様……」
俯く私の耳に、彼の落胆したであろう低い声が響いた。
「だ…だって…一人暮らしをする為に…ここに来たのに…」
掠れてゆく自分の声に、正直ビックリしていた。
「…それは…この沖田有人が必要ないと言う事ではないのですね?」
「はぁ?」
彼の言葉に、私はすっとんきょうな声をあげて彼を見た。
彼の目が、鋭く私を射ぬくように向けられていた。
「…貴方の事は…良く知りませんし…私は一人暮らしをして、一通り色々な事を体験しておきたいだけなんです。料理だってまともに出来ないですし、友達とも遊びたいですし…ですから申し訳な…」
「かしこまりました。ただ、はいそうですかとお聞きするわけにもいきません」
「…えっ?」
解ってくれたのか、そうでないのか、彼は左手を顎に当てて何かを考えているようだった。
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