34人が本棚に入れています
本棚に追加
「花音様?」
彼が再び視線を私に向けると、まるで子供を諭すような優しい表情で口を開いた。
「私たち沖田家は、代々一條家にお仕えするのが使命です。ですから、この沖田有人が花音様にクビを言い渡されたとなれば、旦那様にお仕えしている私の祖父まで同様の扱いとなります」
「えっ?沖田さんまで?」
「はい。致し方ありません…これは私たち沖田家の汚点となりますから…」
そこまで言うと、彼は眉間に皺を寄せて視線をテーブルに落とした。
「で…でも、私はクビだなんて言ったつもりはないのよ?」
彼がちょっと大袈裟に視線を私に戻した。
「…っ!!な…なに?」
「クビではない…私は、北海道の旦那様からの言い付けを守る使命があります。そして、最も大切な私の主であります花音様の願いも叶えて差し上げたい…」
「う…うん…」
彼が口角をキュッと上げて微笑むと、いたずらっ子の様な瞳がキラキラと輝き、思わず息を飲んでしまった。
「沖田有人、いい考えがあります」
.
最初のコメントを投稿しよう!