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小百合さんは静かに席を立ちリビングを後にした。 見送る有人の背中が、怒りに震えているのが分かっても、私にはどうする事も出来ない。 椅子の背に身体を預けると、全身の力が抜けたように、かろうじて呼吸するだけの人形の様になってしまった。 「…花音…」 有人の低い声に目だけで応えると、リビングにジュンさんが入ってきた。 「金城様は…どうしたですかぁ!!」 私の様子を見てジュンさんが傍らに駆け寄った。 「何があったですかぁ!!」 「小百合さんが……」 私の代わりに有人が小百合さんの話を教えてくれた。 有人を小百合さんの執事にしたいということ。 そして、俊太郎さんとの結婚話をちらつかせたこと。 .
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