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「やっぱり有人は言ってないんですねぇ…」
ジュンさんが静かに力を弱めて私から身体を離すと、私をソファに座らせてテラスへ繋がる窓を少しだけ開けた。
柔らかな春の風が、少し上気した顔を撫でていく。
「どうして有人は毎年北海道へ?」
「花音様に会うためですよぉ?」
私に?
…可笑しいわ。だって私は有人と会っていないもの…
また会えるからと、沖田さんに言われていて…結局会えずにいたと思ったけど…
「居たはずです…お屋敷の離れに…」
「離れ?」
お祖父様と沖田さんに、絶対に近寄るなと言われていた離れ。
「離れに…何かあるの?」
一瞬ジュンさんの瞳が揺れた様な気がした。
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