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「えっと……」
まだ片付けきれていない部屋の中で、私はどうしていいものかと視線を泳がせていた。
「花音様?」
「は…はい!?」
私とは正反対に落ち着いている彼は、少し眉をハの字にして言った。
「そのままでは風邪をひかれてしまいます。ただ今何か羽織る物を…」
「…うわぁ!!」
私は寝起きだったからパジャマ姿のままだった。
慌てふためく私に、彼は部屋を見回しながら自分の上着を脱ぐと、フワリと私の肩に乗せた。
「す…すみません…」
途端に顔が熱くなり、顔から火が出るとはまさにこの事だ…
「いえ。早朝に伺ったのがいけませんでした」
ゆっくりと視線を彼に向けると、少しだけ口元を緩ませて私を見ていた。
「と…とりあえずソファに座ってください」
「いえ。朝の食事の仕度をさせていただきます」
「えっ?」
何もなかった様な空気を漂わせて彼は小さなキッチンへと行き、軽く両腕のシャツをまくって冷蔵庫を開けた。
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