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何も買ってない… 冷蔵庫には殆ど何も入っていないはず。 「か…買い物は今日しようと思っていて…」 半分にやけた私がいる。 「はい。買い物はしてきましたから大丈夫です」 大きなトランクの陰から袋を取り出すと、彼はてきぱきと食事の仕度をし始めている。 沖田さんみたい… 彼のお祖父様と言う沖田さんにとてもよく似て、手際よく仕事をこなしていく辺りは、思わず唸ってしまうほどだ。 「……ん、じゃあ私は着替えて…あっ!」 「どうかされましたか?」 どうかされましたかじゃない。 この狭いワンルームの部屋に、執事とは言え若い男性がいるのに、どうやって着替えればいいんだろう… 「あっ、えっと…その…着替えが…」 ドギマギしている私を見つめて、彼がクスッと笑った。 .
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