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「今年は勝負の年だ!我が校は毎年優秀な成績を収めて大学へ進学している。今年も例外ではないと確信している!何故なら――――」
初っぱなから担任の熱血話を聞かされている俺達。真面目に聞いている奴もいれば、友達とこそこそ話してる奴もいる。
俺は廊下側の席だから、頬杖をついて窓から外を見ていた。
中庭に咲いている桜が綺麗だ……。
「こら稲葉!!」
「は、はい!」
すると突然、俺を呼ぶ担任の怒鳴り声で俺の意識は教室に戻された。
「ちゃんと聞かんか!!」
「…………」
教室に起こる笑い声。
くっ……なんで俺ばっかり……。
「という訳で、このクラス内で成績が半分より下の生徒は、これからしばらく毎日!放課後に補習を行う!」
なん……だと……!?
俺の中に一抹の不安が出てきた。クラスの面子を見る限り、俺の順位は半分より下の自信がある。むしろ、そんなに進路が固まっていないのに上位だったら、どんだけ万能キャラだよ俺……!
「始業式が終わる頃には貼り紙を掲示しておくので、各々確認しておくように。じゃあそろそろ時間だから、体育館に移動しよう」
先生の言葉が終わると同時に、教室にため息が零れる。そりゃそうだ。大切だとは分かっていても、嫌なものは嫌なんだから。
そして皆がダラダラと席を立ち上がり、体育館へと向かうのだった。さて、俺も行くかな
「一紀」
すると、廊下に出た瞬間に後ろから聞き覚えのある声と、俺の制服の袖をクイクイと引っ張られる感触がした。
なんだか懐かしい感じに、デジャブに似た感覚を覚えた
振り向く。そこには、俺の袖の端を摘まんで見上げる玲那の姿があった。
やはり、愛華くらいに小さい。
「……一緒に行こう?」
静かに告げる玲那。
ドキッとした。水色の瞳、小さな唇。それのどれもが俺を捉えて離さない。
「…あぁ」
でも、どこか安心感がある。
愛華達と一緒の時とはまた違った雰囲気がある。
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