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体育館に着くと、どこか雰囲気がかわっていた。いや、確かに人がごった返すように多い。でもどこか初々しいと言うか………。
その理由はすぐに分かった。新1年生がいるからだ。
誰もが緊張した面持ちで、集会の時間を待っている様だった。
「俺達のクラスはどこだっけ………。……玲那?」
「……………」
何気なく玲那に話を振ってみる。が、反応がない。不思議に思って見てみると、ソワソワして誰かを探している様だった。
向かう視線は1年生の集団。
「おーい、玲那ー」
「あっ………ごめん…」
目の前で手を振ると、ハッと我に返ったように俺を向く玲那。玲那にしては珍しいな……。
「誰か探してたのか?」
「ううん、なんでもない」
首をフルフル振る玲那。とは言うものの、心ここに在らずといった感じだ。まぁ、俺が深く首を突っ込むコトでもないんだろうけどな……。
「僕達のクラスはあそこみたいですよ」
かくして、諒平が指を差した方に向かい、各々並んで開始時間を待つコトにした。
「一紀さんは進学先とか決めてあるんですか?」
俺と諒平は一緒に並んでそんな話を始める。正直、進路の話は耳が痛い。
「いんや、まだ。お前は?」
「奇遇ですね、僕もです。いくつか候補はあるんですが」
「やっぱり遅いかな、決めるの」
「先生なら言うでしょうね」
候補がない訳じゃない。どれも曖昧と言うか、やりたいコトが見つからないんだよな……。そんな自分に嫌悪感を覚えたり
『静かにしてください』
丁度その時、マイクで生徒会らしい女子の声がマイクを通して体育館に響き渡った。一瞬で辺りはシンと静まり返る
『ただいまより、始業式及び新1年生との合同オリエンテーションを始めます。一同、礼』
さぁて、立ち寝タイムに入るか。俺はソッと目を閉じた。
『始めに、生徒会長の孔寺蓮 香須美(こうじれん かすみ)さんより挨拶があります。お願いします』
俺はカッと目を開いた。
見上げるのは壇上。少しして、腰まで伸びたブロンドヘアーの女性が壇上に上がってくる。
体育館は少しではあるが、ざわめきに包まれた。特に1年生から
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