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『き、今日キィィィィィィィン―――――』
言おうとした瞬間に、マイクから甲高い音が鳴り響く。
一瞬の沈黙の後、ドッと沸く体育館。今度は歓声ではなく、大爆笑。
眼鏡男子の顔が真っ赤っかになり、恥ずかしそうに俯く。ショタっ気のある顔はなんだか可愛かった。
思わず俺もクスリと笑ってしまった。
それから皆に頑張れと応援されながら、その男子はスピーチをなんとか読み終わったのだった。
大きくなれよ……少年。
「か、一紀……」
「ん?」
すると、突然後ろから俺の服をクイクイと引っ張る玲那に意識を取られた。
振り向くとそこには、珍しく頬を……まるでさっきの男子の様に真っ赤にして、唇をキュッと結んで今にも泣きそうな瞳で玲那が俺を見上げてくるではないか。
何かを言いたげで、でも我慢している。そんな感じだった。ハッ……!も、もしかして………!
「………トイレか?」
「ち、違う……!!」
叩かれた。
「どうしたんだよ?」
「さっきのあれ――――」
『続きまして、生徒会長と1年生代表による握手です。会長、壇上へお願いします』
玲那が言おうとした瞬間に、生徒会のマイクが体育館に鳴り響く。生徒が前を向いたので、俺も向くコトにした。
「後でいいか?」
「……うん」
壇上では、香須美と少年が固い握手を交わしていた。香須美が何か声をかけて、少年はそれを黙って聞いている。どんな言葉を投げ掛けたのか、俺には知るよしもない。
そしてその後、先生の演説やらなんやかんやのオリエンテーションが終わり、ついに解散となった。体育館が騒がしくなり、生徒がぞろぞろと帰っていく。俺達も帰るか。っと、その前に
「さっきの続きだけど」
体育館と、校舎を繋ぐ渡り廊下を歩きながら玲那に訪ねる。
「うん。えっとね―――」
「あら、珍しい顔ね」
「いってぇ!!」
またもや玲那の言葉が遮られる。同時に、俺は背中を蹴られて前のめりに倒れた。
この声でこんなコトをやってくるのはアイツしかいない
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