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「よかった。仲良さそうで」
そのやり取りを見て、シュガーとミルクがコーヒーに混ざりゆく様を見ながら微笑む玲那。ずっと玲那が俺達の仲介に入ってたコトを俺は知っている。
嬉しいんだろうな。
「ち、違うし!全然気なんて許してないからな僕は!」
相変わらずツンケンした態度を見せる那月。嫌よ嫌よもなんとやら、ってやつだといいけどな。
「まぁ、これからよろしくな、那月。改めて、俺は稲葉 一紀」
どうせだから、手を差し出してみる。これに応じてくれたなら、きっとこの先上手くいくだろうと信じて。
拒否られたら……その時はその時だ。
「……相條…那月……」
警戒しつつも、手をさしださして握り返してきた那月。男の割には小さい手だった。
しかし俺の気分的にはかなり楽になった。嫌われたままだとこの先やりにくいしな。
…………………………
それから何時間か相條宅でくつろいだ後に、俺は帰路に着くコトにした。緊張したが、楽しくもあった。
「また、来てね」
そこの玄関で、玲那と那月に見送られた。
「来なくていいよ、もう」
「………………」
そう言われると、ガチでショックが大きいんだが……。
那月が言った後に玲那にパシッと背中を叩かれ、クッと歯を食い縛って視線を反らす那月。
「次は、お父さんとお母さんがいる時に……」
「……………」
そ、それもそれで来にくいな……。
てか!まるで娘さんを僕にくださいって言ってるみたいじゃないかそれ!
「?どうしたの?」
きっと意図があって言ってるじゃないコトは確かだ。じゃないと、こんな円らな瞳で不思議そうに見てくる筈がない。くそっ、可愛いじゃねーか……。
「い、いや……。と、とにかく今日は帰るよ」
また那月にあれこれ言われるかもしれないから、今日は退散するコトにする。
去り際に、玲那がそう思ってくれるんだったら、次もまた来てもいいかなって、そう思うのだった。
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