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そんなこんなのやり取りをしながら、俺と愛華はリビングに入る。俺の家のリビングは台所と繋がっていて、テーブルでご飯を食べながらリビングのテレビを見れるという、なんとも過ごしやすい部屋だ。
まだ少し肌寒い廊下からリビングに入った瞬間に、春の太陽の日差しが部屋を暖めていた。
「あ!おはよーいちにぃ♪」
そして同時に、可愛らしい声が飛んできて、腹に抱きついてくる姿があった。
俺と愛華の子供……なはずがない。
「おはよう、てんちゃん」
朝の挨拶をしててんちゃんの頭を撫でると、くすぐったそうに目を細める。
「天華ね、今日から3年生なのー♪」
クリクリの真っ黒な瞳を輝かせて俺を見上げるのは、愛華の従姉妹である柏崎 天華(かしわざき てんか)。愛称は「てんちゃん」だ。今日から小学3年生。
まぁ、これまたややこしい事情で何故か二年前からウチで面倒を見るコトになっている。でも実際のところ、この家の家事とか諸々は紅川家に頼りっきりなので、実質俺はお守り役みたいなものだ。
「そっか。勉強がんばれよ」
「うんっ!」
でも実際、子供の相手とが何をどうすればいいのか全く分からん!!
だからこんな風に無愛想なやり取りになってしまうんだが……不思議と不満な声はない。ってコトは、これでいい……のか……?
「てんちゃん、今年もモテモテだもんねー♪」
てんちゃんの前では、愛華もお姉ちゃんになる。何となく違和感のある光景だ。きっと妹の用な存在ができて嬉しいんだろうな。
「そんなコト……ないけど……」
愛華に言われ、モジモジとするてんちゃん。……意外に自覚があるのかもしれない。見ているだけでも、なんとも微笑ましい光景だけどな。
「誤魔化さなくていいのっ♪ほら、時間ないんだから早く早くっ」
ゆるーいやり取りから、愛華が急かす。そうして、俺達3人は忙しない朝食を食べるのだった。
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