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そして朝食を食べ終わり、歯磨きをして制服に袖を通す。
この忙しなさが、気持ちを引き締める。今日から俺は3年生になる。高校生活最後の年、頑張りますかね。
「「いってきまーす!」」
登校時間になり、2人の可愛らしい声が玄関に響く。俺も心の中で静かに呟き、家を後にする。
空は快晴。春の温かな香りが鼻をくすぐった。
「クラスどうなるかなぁ?知ってる人がいればいいけど」
しばらく歩いてから、愛華が少し眉をしかめて唸る。
と言うのも、2年の後半から、学年は文系と理系にの2つに別れるコトになる。
3年からは更に、進学組と就職組の2つに別れる。俺と愛華は理数系ができないから文系に進んだ訳だが、2年時の段階で俺は進学、愛華は就職の道を選んだ。だから必然的に一緒のクラスにはならない。
「愛華なら大丈夫だろ。すぐ友達できるし」
笑って無用な心配だと気を紛らわせる。
愛華よりも俺の方が心配だよむしろ。
「でもまさか、いっちーが進学組に行くとはねぇ」
目を線みたくして、フムフムと顎に手を当てる愛華。
「ほら、就職難じゃん。やっぱ大学とか行った方がいいかなって」
なんて安易な考えだが。
実際、やりたいコトも特別ある訳じゃないし。
「私はもう勉強したくないからさ」
「それは言えてる」
冗談めかしながら通学路を歩く。
そうなんだよな、今年は悩むコトが多くならそうだ。
「何の話してるのー!?」
そこにてんちゃんが、サイドテールを揺らめかせながら不思議そうに首を傾げて尋ねてくる。
「てんちゃんには難し~い大人の話なのっ♪」
とか言う愛華も大人って感じではないが……ま、いっか。
しばらく歩いて行くと、見馴れた制服の学生が少しずつ増えていくのが見て分かった。中には新入生もいるのだろう。当時の俺もピカピカの1年生気分で、未来に期待を膨らませていたのだろうか。
やっぱ変わるもんだな。
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