Prologue

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教室に入る。さぁ、ここが俺の新しいクラスだ。 「……………」 入り口に立って、教室を見渡す。 自然と探すのは、玲那の姿。他の皆は、それぞれ好きな時間を過ごしている様だ。雑談してる人から、1人で静かにしている人、様々だ。 その中で見つけた。教室の右端、一番前の席。青紫したショートヘアーの女の子を。愛華くらい小さくて、まるで小学生が紛れ込んでいるよう。 周りの喧騒から隔離され、1人だけ不思議なオーラに包まれていた。 俺の席は出席名簿からして、恐らく玲那の2つ後ろ。 とりあえずはそこに鞄を置き、席に座って様子を伺うコトにした。 「……………」 全く、ピクリとも動かない。時々、ページをめくる為に手を少し動かすくらいだ。どうやら相変わらずの様だ。 それからさりげなく辺りを見渡し、誰もこっちを見てないコトを確認しつつ席を立ち上がる。そこ!不審者とか言わない! 恥ずかしがりながらも女子に話しかけようとしている、純情な男子の心情を理解してくれると助かる。 「…………」 玲那の後ろに立つ。 声をかけ……れない!うっわ……俺めっちゃ変な奴じゃん……。声をかけたいのに、緊張のあまりか声が出ない。自意識過剰かもしれないが、視線まで感じる。 「?」 その時、玲那が俺の気配に気づいたのか、本から顔を上げて俺の方を見たではないか。 視線が合う。赤縁眼鏡の奥に潜む、水色の瞳が俺を捉えた。 「あっ……」 玲那の小さな声がしたかと思うと、瞳の瞳孔が驚いたかの様にキュッと小さくなったのが分かった。 時間が止まった気がした。まるで運命の出会いの瞬間の様に。 そしてしばらくして、何を言うでもなく、玲那は静かに笑みを浮かべるのだった。 俺の声は未だに出ない。緊張でも何でもなく、ただ見とれていたから。どこか儚げで、すぐに散ってしまいそうな桜の花の様な笑みに 後から考えたら、今この瞬間が俺の中で全ての始まりだったのかもしれない。 こんなのが、俺と玲那の1年越しの再会だった。
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