2066人が本棚に入れています
本棚に追加
教室に入る。さぁ、ここが俺の新しいクラスだ。
「……………」
入り口に立って、教室を見渡す。
自然と探すのは、玲那の姿。他の皆は、それぞれ好きな時間を過ごしている様だ。雑談してる人から、1人で静かにしている人、様々だ。
その中で見つけた。教室の右端、一番前の席。青紫したショートヘアーの女の子を。愛華くらい小さくて、まるで小学生が紛れ込んでいるよう。
周りの喧騒から隔離され、1人だけ不思議なオーラに包まれていた。
俺の席は出席名簿からして、恐らく玲那の2つ後ろ。
とりあえずはそこに鞄を置き、席に座って様子を伺うコトにした。
「……………」
全く、ピクリとも動かない。時々、ページをめくる為に手を少し動かすくらいだ。どうやら相変わらずの様だ。
それからさりげなく辺りを見渡し、誰もこっちを見てないコトを確認しつつ席を立ち上がる。そこ!不審者とか言わない!
恥ずかしがりながらも女子に話しかけようとしている、純情な男子の心情を理解してくれると助かる。
「…………」
玲那の後ろに立つ。
声をかけ……れない!うっわ……俺めっちゃ変な奴じゃん……。声をかけたいのに、緊張のあまりか声が出ない。自意識過剰かもしれないが、視線まで感じる。
「?」
その時、玲那が俺の気配に気づいたのか、本から顔を上げて俺の方を見たではないか。
視線が合う。赤縁眼鏡の奥に潜む、水色の瞳が俺を捉えた。
「あっ……」
玲那の小さな声がしたかと思うと、瞳の瞳孔が驚いたかの様にキュッと小さくなったのが分かった。
時間が止まった気がした。まるで運命の出会いの瞬間の様に。
そしてしばらくして、何を言うでもなく、玲那は静かに笑みを浮かべるのだった。
俺の声は未だに出ない。緊張でも何でもなく、ただ見とれていたから。どこか儚げで、すぐに散ってしまいそうな桜の花の様な笑みに
後から考えたら、今この瞬間が俺の中で全ての始まりだったのかもしれない。
こんなのが、俺と玲那の1年越しの再会だった。
最初のコメントを投稿しよう!