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「ご次男とはいえ右大臣家に相応しい貴公子でいらっしゃいましたよ。確か私と同じお年だったかと思いますが、落ち着いた物腰の、きっと姫様とはお似合いでいらっしゃいます」
静尾は記憶の中の姿を辿るように一言一言、確かめながら応えた。
「素敵な方なんやね?」
綾子が怖ず怖ずと確かめるように窺う。
「はい。それはもう…静尾をお信じ下さいませ」
その言葉に綾子は渋々納得したような顔をした。
「静尾と惣太のように、相思うような出会いを夢見ていたんやけど……やっぱり私には無理な願いやったわねぇ」
と溜め息混じりに空を見上げて呟いた。
――貴家に生まれ、両親の愛に包まれ、不自由ない暮らしに育ちながら、私のような恋に憧れるなんて……
静尾は意外な思いで横顔を見つめた。
それに気付いて
「ごめんなさい。静尾の悲しみや苦しみを見ていながら憧れる…なんて、呑気な事を言って」
と顔を覗き込むようにして綾子が謝罪の言葉を口にし、静尾は慌ててかぶりを振った。
「…でも、やはり羨ましいわ。良経様も惣太が静尾を思うたように、私を思うて下さるかしら」
そう言いながら、少し寂しげに微笑んだ。
「……姫様。お傍においでになられる事が何よりの幸せ。ご一緒におられる時があればこそ、思いを育てる事もできるのでござりまする」
「静尾……そうやね。その通りやわ」
綾子は沈みそうになる静尾への申し訳なさからか、敢えて明るい声でそう言った。
そして
「そう言えばねぇ、確か良経様と同じお名前の叔父様がいらしたような気がするわ」
「へえ……良経様と?」
「九条院雑仕の常盤様がお生みになられた方で、確か一番末の弟が九郎ヨシツネ……と」
「九条院雑仕の常盤様…?」
「源家のお祖父さまのご妻妾のお一人であらはった常盤様。九条院さまの雑仕であらはったのよ。ほんで大蔵卿長成様へ再嫁されて、能成様をお生みになられたの」
「へ…ぇ、よくご存知でいらっしゃいますねぇ」
感心したように言うと、
「先年お隠れになられた帝の四宮のお母上と能成さまはお再従兄弟さんで、お歳も近いせいか仲良うしておいでやのよ。四宮の御母上はおもうさんのお従兄妹さんやし。そんなご縁でおもうさんとはお顔を合わせはる事もおありらしいわ」
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