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彼女は髪を戻す。
「左目、驚きました? 義眼ではありません。原因は不明なんです。それに、右目も光に弱くて、髪の毛である程度の光を遮っているんです」
「そうだったのか……」
彼女は居住まいを正す。自然、空気が張りつめた気がした。
「私はノンナ・イリユシェンコです」
「ノンナか……。そう言えば、日本語上手いな」
普通に話していたが、今は翻訳機を付けていないことを思い出した。
「はい、多国籍語を話せる……。それぐらいしか特技ありませんから」
「頭良いんだな……」
「ふふっ……ありがとうございます」
空気が和らいだ気がした。
「神谷さんは、隣に入った方と一緒に居たと聞きました。どんな関係なんですか?」
「関係? 日本から一緒に脱出しただけだ。もしかしたら、もう一人居たかもしれないけどな……」
直樹は俯く。
「もう一人……?」
「あぁ、死んじまった……」
「そうなんですか……」
ノンナは立ち上がる。
「そろそろ失礼します。また今度、来てもいいですか?」
「あぁ」
彼女は出て行った。
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