第一話

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彼女は髪を戻す。 「左目、驚きました? 義眼ではありません。原因は不明なんです。それに、右目も光に弱くて、髪の毛である程度の光を遮っているんです」 「そうだったのか……」 彼女は居住まいを正す。自然、空気が張りつめた気がした。 「私はノンナ・イリユシェンコです」 「ノンナか……。そう言えば、日本語上手いな」 普通に話していたが、今は翻訳機を付けていないことを思い出した。 「はい、多国籍語を話せる……。それぐらいしか特技ありませんから」 「頭良いんだな……」 「ふふっ……ありがとうございます」 空気が和らいだ気がした。 「神谷さんは、隣に入った方と一緒に居たと聞きました。どんな関係なんですか?」 「関係? 日本から一緒に脱出しただけだ。もしかしたら、もう一人居たかもしれないけどな……」 直樹は俯く。 「もう一人……?」 「あぁ、死んじまった……」 「そうなんですか……」 ノンナは立ち上がる。 「そろそろ失礼します。また今度、来てもいいですか?」 「あぁ」 彼女は出て行った。
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