第一話

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* 海洋研究所ロシア支部。表向きには北極海の調査をしている。 「ただ今戻りました」 「……どうだった?」 ピリピリとした空気の中、ガスマスクをつけた男が報告する。 「データは全てコピーしました。不測の事態がありましたが、そちらは心配いらないかと」 「珍しいな、貴様が任務をこなすとは……」 「いつも失敗ばかりしているわけにはいきません。たまには成功しますよ」 「そうか……」 ガスマスクをつけた男はディスクをデスクの上に置く。 「では、これで」 「待て」 首だけ動かして所長を見る。 「……何か?」 「貴様に面倒を見てもらい奴がいる」 「誰でしょうか?」 「入れ」 ドアが開き、これで目だけ見えれば低級のホラー映画には起用できるであろう女性が入ってきた。 「失礼します」 「彼女は?」 「タイプ・スリー。人としての生活ができる」 「……彼女も変異種と?」 「そうだ」 「了解しました」 「よろしくお願いします」 彼女は深々とお辞儀をする。 「彼女が死ななければ好きなようにするといい。君の作戦の補佐でも、夜のお供でもな」
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