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部屋を出てしばらく、男は振り返る。
「一つだけ言っておく。俺は貴様の相手など御免だ。好きなようにしろ。ただし、一応は命令もある。紙でもデータでもいい、一日の行動報告はしろ。毎日だ」
「了解しました」
女は立ち去った。
「気持ちが悪い……」
依然ガスマスクをつけたままの男は自室に戻った。
*
「じゃあ、無職なのか?」
「はい」
公園でたまたまノンナに会った直樹は、ベンチに座って彼女と話をしていた。
「でも、そろそろ保険金が底をつくので、働かなければいけないんです」
「なるほどな。頑張れよ」
「はい。ところで神谷さんは、軍のお誘いを断ったと聞きました。どうしてですか?」
「……あんなのと戦うのは御免だよ。命がいくつあっても足りねぇ」
「なるほど……」
「それより、お前はよく知ってるな。スパイとしてやっていけるんじゃねぇか?」
「そうですか? じゃあ、スパイやろうかなぁ……」
「バレたら死ぬかもな」
「えぇ!? 死ぬんですか!?」
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