第一話

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部屋を出てしばらく、男は振り返る。 「一つだけ言っておく。俺は貴様の相手など御免だ。好きなようにしろ。ただし、一応は命令もある。紙でもデータでもいい、一日の行動報告はしろ。毎日だ」 「了解しました」 女は立ち去った。 「気持ちが悪い……」 依然ガスマスクをつけたままの男は自室に戻った。 * 「じゃあ、無職なのか?」 「はい」 公園でたまたまノンナに会った直樹は、ベンチに座って彼女と話をしていた。 「でも、そろそろ保険金が底をつくので、働かなければいけないんです」 「なるほどな。頑張れよ」 「はい。ところで神谷さんは、軍のお誘いを断ったと聞きました。どうしてですか?」 「……あんなのと戦うのは御免だよ。命がいくつあっても足りねぇ」 「なるほど……」 「それより、お前はよく知ってるな。スパイとしてやっていけるんじゃねぇか?」 「そうですか? じゃあ、スパイやろうかなぁ……」 「バレたら死ぬかもな」 「えぇ!? 死ぬんですか!?」
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